[Squeak-ja: 2082] Re: スクイーク・ラボ準備中(多摩美)

Ryoan Ishizuka lunatech @ OperaHaus.net
2004年 12月 13日 (月) 19:44:59 JST


石塚@多摩美術大学です。

On Mon, 13 Dec 2004 09:20:37 +0900
suto <suto @ amcac.ac.jp> wrote:

> さて私の担当している演習に「情報デザイン演習」というのがありまして、
> 来年度のカリキュラムにSqueakを導入できないかと計画中です。
> (現在はJavaScriptで遊ばせています)
> 多摩美でありました「スクイーク特別講座」の内容、
> もし差し障り有りませんでしたらもう少しお聞かせ頂けませんでしょうか。
> よろしくお願いします。

 夏の特別講座は前期の授業が終っての補講期間に4日間にわたって開きました。
この特別講座は学生にとっては単位になりませんが、通常のカリキュラムにない
内容を教えたりするのに使われています。

 多摩美術大学では、プログラミング言語としてはC言語、Java/Javascript、DBN
(ジョン前田と多摩美が共同で作ったデザイン学習用の言語です)などを教えて
いますが、あまりに「プログラミング」の向きが強く、学生が夢中になると本来
学ぶべきデザインがおろそかになってしまいます。

 このジレンマは以前より指摘されていました。

 そしてSqueakにしたらどうだろうか、と。

 まず、Squeakのアーキテクチャ/環境が、かなり広範にわたって「情報デザイ
ン」の分野をカバーできそうな点、オブジェクト指向の考え方・アプローチとデ
ザインの親和性が高いこと、実際にデザイン対象をモデリングできる点などから
情報デザインの基本としてSqueakを評価・検証してみようということになりまし
た。

 そしてまず夏に学生の希望者向けに講座を実施してみました。集まった学生は
12名ほどです。

 はじめの日は、阿部さんと同じようにSqueakの生い立ち、そひてコンピュータ
の簡単な歴史(多摩美の学生はコンピュータの歴史をほとんど知りません)、そ
してSqueakのはじめの一歩eToys。様々なリソースのありかを知らせ、家で自分
でもトライできるように。

 2日めは様々なeToysの使い方をそれぞれにあわせて実践的に教えます。それと
同時にCroquetなどSqueakの「別の」展開も見せます。Aliceも行いました。タイ
ルによるプログラミング以上に学生の反応は過激でした。そこら中でAliceが踊っ
たり、走ったりしていました。

 3日めは、はじめデザインとしてのオブジェクト指向を講義し、デザイン作業
で行うモデリングとオブジェクト指向の「近さ」を学びます。そして単純なMorph
のコピーとChildをつくることの違いを考えます。そしてそれを考えながら、最終
日の自由課題のテーマを決めます。

 最終日ははじめに「情報デザインとSqueak」についてのまとめ。その後でそれ
ぞれが自由課題に取り組みます。出来上がってきたものとしては、ドロケイのシ
ミュレーションや一日の影のシミュレーション(これはあまり正確なものではあ
りませんでしたが、事前に用意した画像によるアニメーションではなく、影の形
を変えていました)など。そして最後にそれぞれが見せあいっこ。

 Squeakは子供に教えるための素材はいろいろあったのですが、デザイン教育の
なかにどのように持ち込むかは試行錯誤でした。ただ、学生にも受け入れられ、
その様子を他学科の先生なども覗いていて、学内でもこのような活動がみとめら
れるような雰囲気づくりをし、「スクイーク・ラボ」設立への足がかりをつくり
ます。

 そして阿部さんをお招きして別に「世界聴診器」のデモ・特別講座を行いまし
た。来年度の『ベンチャー起業論』(全学対象)では、世界聴診器のデザイン(
パッケージから事業まで)を行う予定です。

 今年の夏期特別講座は学内へのデモンストレーション半分、学生の様子見が半
分でしたが、だいぶデザイン現場でのSqueakの受け入れられ方の様子がわかって
きたので今年はスクイーク・ラボを拠点にして本腰をいれてカリキュラム作りを
進めます。

 多摩美は工学の大学ではないので、動くだけではダメで常にデザインの妥当性
が求められます。そのなかでSqueakにおぼれることなく自然にデザインのツール
として利用できるようになるまでの道筋をつけたいと思っています。

 まだまだ前線では試行錯誤の連続ですが、少しでもご参考にしていただけたら
と思います。

 また、スクイーク・ラボは多摩美のなかで閉じることなく、他の大学や研究・
教育機関、企業やNPO等ともおおらかに結託して活動していくつもりですので、
なんなりとお声をかけてください。
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KOTONOHA Project '04
Ryoan Ishizuka -- like a transient fish.




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